法人税の基礎と税務調整
法人税とは
・法人税は、法人の所得に課税される国税で、各法人が税額を計算して収める申告納税方式。
法人税の納税義務者
・法人の内、内国法人(国内に本店または主たる事務所を有する法人)は原則、日本国内で得た所得(国内源泉所得)と、海外で得た所得(国外源泉所得)、ともに納税義務を負う。
・なお、内国法人に該当しない法人を外国法人といい、その課税範囲は原則、日本国内で得た所得のみとなる。
課税所得金額と税務調整
・法人税の課税対象となる所得金額は、企業会計上の利益(収益-費用)ではなく、法人税法上の所得となる。法人税法上の所得は、益金(税法上の利益)から損金(税法上の費用)を差し引いた金額である。
・益金と収益、損金と費用は一致しないこともあり、会計上の利益と法人税法上の所得は必ずしも一致しない。そのため、法人税法上の所得を求めることを、税務調整(or申告調整)という。

基本的な考え方としては、利益-費用で合っています。
ただ、利益と益金、費用と損金で一致しない項目があることから、そこを調整して法人税を求めるのが税務調整です。
課税所得金額の計算方法
・税務調整は、益金算入、損金不算入、益金不算入、損金算入の4つの調整を用いて行う。益金算入と損金不算入では所得金額が増え、益金不算入と損金算入では所得金額が減る。

益金
・法人が株式等の配当金を受け取った場合、会計上は収益だが、税法上は一定の割合については益金不算入になる。
| 法人の持株比率 | 受取配当金の益金不算入の割合 |
| 100%(完全子法人) | 100%(全額益金不算入) |
| 1/3超~100%未満(関連法人) | 原則100%(負債利子控除の適応あり) |
| 5%超~1/3以下(その他) | 50% |
| 5%以下(非支配目的) | 20% |
損金
役員給与と役員退職金
・役員給与は主に、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当する。

・いずれも、その金額が適正であれば損金に算入できるが、不相当に高額な部分は損金不算入になる。
・なお、役員賞与は、事前確定届出給与として届出を行わない決算によるものは、損金不算入となる。
・また、役員退職金は、事前に届出を行わなくとも、不相当に高額な部分の金額を除いて損金に算入できる。
・従業員への給与や賞与は、原則全額を損金算入できる。

損金不算入ということは、経費にできないということです。
言い換えれば、損金不算入になることで、法人の所得を減らして節税することが出来なくなるということです。
交際費等
・得意先や取引先の接待や贈答を行う場合の支出のこと。
・交際費等に該当しない支出例として以下がある。
1人あたり1万円以下となる得意先等との飲食費→会議費
カレンダーや手帳などの作成費用→広告宣伝費
会議での茶菓子や弁当代などの飲食費→会議費
社内旅行や運動会等の従業員の慰安のためのイベント費用→福利厚生費
・交際費等は、会計上は全額費用として計上されるが、法人税法上は原則として損金不算入となる。
・損金に算入できる交際費等については以下。
資本金1億円超100億円以下の法人→年間交際費のうち接待飲食費の50%
資本金1億円以下の法人→下記のいずれか多い金額
①年間交際費のうち接待飲食費の50%
②年間交際費のうち800万円以下の全額
・個人事業主の場合は、原則として交際費等は必要経費として全額計上できる。
租税公課
・法人が納付した税金や罰金など(これを租税公課という)については、損金に算入できるものとできないものがある。

減価償却費
・減価償却費として損金算入できる金額は、法人が選択した償却方法によって損金経理(会計上で費用として計上)した金額の内、償却限度額に達するまでの金額。償却限度額を超える部分は、法人税法上は損金不算入となる。
・償却方法は所得税同様、原則として定額法か定率法かの選択性。選択は所轄の税務署長への届出により行うが、届出がない場合は法定償却費用である定率法となる。なお、建物など定額法でしか償却できないものもある。

ちなみに個人の事業所得の減価償却費は、選択しなければ定額法です。
法人は定率法なので注意しましょう。
・法人税と所得税の償却法の違いは以下。

・また、少額の減価償却資産の取り扱いについては所得税と同じ。

寄付金
・国または地方公共団体への寄付金と指定寄付金は、全額損金とすることができる。
法人・役員間の取引の税務
《法人と役員間の資産の譲渡取引》
・法人の資産を役員に譲渡した場合


私は以下のイメージで覚えています。
低額譲渡は時価の1/2未満での譲渡で安く売ること、高額譲渡は高く売ることです。
低額譲渡or無償譲渡の場合は役員が安く資産を手に入れるので役員が得をして法人が損をします。法人→役員で法人が損をしますが、それを損金算入(経費として計上)できると、役員が法人名義で好き放題資産を購入して全部経費にすればウハウハになるので、そうならないように法人の取り扱いは損金不算入です。役員は法人から安く資産を入手出来て得するので、役員の取り扱いは役員給与です。
高額譲渡の場合は役員が時価より高く法人の資産を買うので、役員は損して法人が得します。得した法人は益金算入、損した役員は法人への寄付です。
・役員の資産を法人に譲渡した場合


低額譲渡は役員が損をして法人が得をします。法人は得したので益金算入、役員は損をしているけれど譲渡所得です。ここで役員が譲渡所得として課税をされないと、役員は法人に低額譲渡を繰り返すことで譲渡損失を生み出して自分の所得を過剰に安く見せて所得税から逃げられようになります。
高額譲渡は役員が得をして法人が損をします。役員は得をしたので役員給与。法人は損をしたが損金算入(経費に計上)ができてしまうと、役員は法人に高額譲渡を繰り返すことでウハウハになるので、損金不算入です。
《法人と役員間の金銭の貸借》
・法人が役員に金銭を貸付けた場合

・役員が法人に金銭を貸し付けた場合

《法人と役員間の住宅の貸借》
・法人が所有する社宅を、役員に無償か通常より低い金額で貸した場合、適正な賃貸料相当額もしくはそれとの差額を役員給与とし、法人税法上の取扱いは原則、損金不算入とする。また、役員には給与所得として課税される。
法人税の税率と申告・納税
法人税額の計算
・法人税は、税務調整後の所得金額に法人税の税率を掛けて算出するが、期末資本金が1億円以下の一定の中小法人に対する税率は、所得金額の内、通常800万円以下の部分について15%の軽減税率が適用される。

確定申告と中間申告
・法人税の申告には、確定申告と中間申告がある。
・法人税を申告した法人は、原則として、申告書の提出期限までに法人税を納めなければならない。(申告期限と納付期限が同じ)

法人税の納税地
・内国法人は、その本店または主たる事務所の所在地が納税地になる。外国法人で国内に事業所等を有する法人は、その事務所等の所在地が納税地になる。
法人税の青色申告
・法人税にも個人の所得税同様、青色申告制度がある。青色申告制度の適用を受けるには、一定の期限までに「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出して承認を受ける必要がある。
《青色申告の承認申請書の提出期限》
・原則:青色申告制度の承認を受けようとする事業年度開始日の前日
・新設法人は以下のいずれか早いほうの前日
①法人設立の日から3か月経過日
②最初の事業年度の終了の日
《青色申告制度の特典》
・欠損金の繰越控除:事業年度に生じた欠損金(赤字)を翌年以降10年間、繰越控除することができる。個人事業主は3年間なので、7年間も長い。
・欠損金の繰戻還付:利益が出て法人税を支払った翌事業年度に欠損金が出た場合、その欠損金を繰り戻し、前事業年度分の法人税の還付を受けることができる。ただし、以下の条件がある。
〇原則、資本金1億円以下の中小企業に適用
〇繰戻還付の対象となるのは、前事業年度だけ
〇前事業年度、今事業年度ともに青色申告法人である
決算書
以下のものが含まれる。
・損益計算書:一定期間における企業の収益・費用・利益を示す書類
・貸借対照表:期末時点における企業の財務状況(資産・負債・純資産の残高)を示す書類
・株主資本等変動計算書:一定期間における企業の株主資本等の変動状況を示す書類
・キャッシュフロー計算書:一定期間における企業のキャッシュフロー(資金の増減)の状況を、営業・投資・財務に分けて示す書類
法人住民税・法人事業税・地方法人税
《法人住民税》
・法人住民税は、法人に対する道府県民税と市町村民税に分けられ、それぞれに均等割(資本金の額や従業員数で異なる)と法人税割(法人税額から計算)の合計額が税額となる。
《法人事業税》
・法人事業税は、法人の事業に対して課税される都道府県民税。税額は所得金額に税率を掛けて計算する。
・ただし、資本金が1億円超の法人に対しては、所得金額以外の要素も考慮した外形標準課税が適用される。
・個人事業主には事業主控除(290万円)があるが、法人税事業税には控除はない。
《地方法人税》
・地方法人税は、課税標準法人税額に所定の税率を掛けて計算する。
・納付期限は、法人税と同じく事業年度終了の日(決算日)の翌日から2か月以内。
法人成り
・個人で行っている事業を、株式会社などの法人組織にすることを、法人成りという。
・法人成りには以下のメリット・デメリットがある。
《メリット》
・課税所得が高い場合、所得税より法人税が有利になる場合がある
・経営者の報酬(退職金を含む)を経費として計上できる
《デメリット》
・交際費の損金計上に制限がある
・赤字でも税金が発生する
・申告のための書類の作成や事務手続きが煩雑になる
コメント
簿記や法人の運営などを行っていないとイメージが湧きづらい分野です。
租税公課、法人と役員間の取引に係る税務、軽減税率が良く出ます。
過去問

正解はこちら
正解は①です。罰金が損金算入できる(経費にできる)なんてことはありません。悪いことをしたら素直にお金を払いましょう。

正解はこちら
正解は③です。役員→法人への譲渡については、①時価の1/2以上かつ時価未満の場合は「譲渡価額」、②時価の1/2未満の場合は「時価」で役員の譲渡所得の計算を行います。

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