概要

相続税の計算は概ね上記の流れになる。
Step1 各人の課税価格の計算
Step2 上記を合算した後に基礎控除を差し引いて課税遺産総額を計算。その後、各人が法定相続分で相続したと仮定して按分し、税率をかけたものを合算することで相続税の総額を計算
Step3 最後に実際の相続人の取得割合(按分割合)でそれぞれの納付する税額を計算する。税額控除や2割加算を対象者には行う。
Step1 各人の課税価格の計算

A:本来の相続財産
・本来の相続財産とは、被相続人が生前に所有していた財産(預貯金・株式・土地・建物など)で、金銭で換算できる経済的価値のある財産をいう。
B:みなし相続財産
・みなし相続財産とは、本来は相続財産でないが、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った財産をいう。
・みなし相続財産には、次のようなものがある。
生命保険金:被相続人が契約者(保険料を支払う人)で、被相続人の死亡によって支払われる保険金
死亡退職金:被相続人の死亡によって支給される退職金で、被相続人の死後3年以内に支給額が確定したもの

死後3年を超えて確定した死亡退職金は受け取った者の一時所得として所得税の対象になります。
C:相続時精算課税による贈与財産
・相続時精算課税は、生前に親・祖父母(被相続人)から子・孫に贈与をした時に贈与税を軽減し、その代わりに相続の時に、贈与された財産を相続財産に加算する(相続税がかかる)という制度である。
・相続時精算課税を選択した場合、相続時精算課税の適用財産は相続財産として加算される。
・この場合、相続財産として加算される金額は贈与時の価額となる。

相続時精算課税は贈与税を先延ばしにして相続税として支払うだけで節税にはなりません。むしろ、暦年贈与が出来なくなるデメリットがあるので注意して選択しましょう。
D:相続開始前3年以内(今後は7年以内に順次拡大予定)の贈与財産(生前贈与加算)
・相続人が、相続開始前3-7年以内に被相続人から贈与を受けた場合、その贈与財産は相続財産として加算される。

贈与時に支払った贈与税は、相続税の計算において、贈与税額控除として控除の対象になります。
・この場合、相続財産として加算される金額は贈与時の価額となる。
E:非課税財産
・次の財産は、相続税の課税対象とならない。
墓地、墓石、祭具、仏壇、仏具、生命保険金のうち一定額、死亡退職金のうち一定額
《生命保険金・死亡退職金のうち非課税額》
・相続人が生命保険金や死亡退職金を受け取った時は、それぞれについて、次の計算式で求めた金額が非課税になる。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
・各人の非課税金額は、上記の非課税限度額を次の計算式で按分した金額となる。
各人の非課税金額=非課税限度額×その相続人が受け取った死亡保険金等/全相続人が受け取った死亡保険金等
・なお、相続を放棄した人は相続人ではないため、相続を放棄した人が受け取った保険金等については、非課税の適用はない。
《弔慰金のうち非課税額》
・相続人等が受け取った弔慰金については、以下の金額までは非課税となる。
【業務上の死亡の場合】非課税限度額=死亡時の普通給与×36か月分
【業務外の死亡】非課税限度額=死亡時の普通給与×6か月分
F:債務・葬式費用
・被相続人の債務を承継した場合は、課税価格から控除できる。
・葬式費用を負担した場合も、その費用が控除される。
《債務》
【控除できるもの】借入金、未払いの医療費、未払いの税金等
【控除できないもの】生前に購入した墓碑や仏壇などの未払い金等
《葬式費用》
【控除できるもの】通夜・告別式の費用、火災費用、納骨費用等
【控除できないもの】香典返しの費用、法要費用(初七日等)等
Step2 相続税の総額の計算
まずは上記で求めた各人の課税価格を合算し、そこから基礎控除を差し引いて課税遺産総額を計算する。

遺産に係る基礎控除
・各人の課税価格の合計額から、遺産に係る基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を計算する。
・遺産に係る基礎控除額は次の計算式で求める。
遺産に係る基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
・法定相続人の数には、相続を放棄した人も数える。普通養子は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に入れることが可能。特別養子は実子としてカウント。

普通養子は実父母と養父母両方の相続人であり、特別養子は養父母のみの相続人です。
相続税の総額の計算
・上記より求めた課税遺産総額を、各法定相続人が法定相続分で取得したと仮定。その取得金額に応じた税率を乗じて各人の仮の相続税額が算出でき、それらを合計したら相続税の総額となる。

《相続税の税率》
・課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して、各人の仮の相続税額を計算し、これを合算して相続税の総額を計算する。
・相続税の税額は次の速算表を用いて計算する。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1000万円以下 | 10% | – |
| 1000万円超3000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3000万円超5000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超2億円以下 | 40% | 1700万円 |
| 2億円超3億円以下 | 45% | 2700万円 |
| 3億円超6億円以下 | 50% | 4200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7200万円 |

所得税の最高税率も高すぎですが、相続税の最高税率も高すぎですね。
節税対策が叫ばれる理由が分かる気がします。
Step3 各人の納付税額の計算

各人の算出税額の計算
・Step2で計算した相続税の総額に、実際の按分割合(各人が実際に受け取った課税価格の割合)を掛けて各人の算出税額を計算する。
各人の算出税額=相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額
相続税額の2割加算
・被相続人の配偶者および1親等の血族(子・父母)以外の人が、相続または遺贈によって財産を取得した場合には、算出税額の2割が加算される。
相続税の加算額=算出税額×20%
・なお、代襲相続人である孫は2割加算の対象とはならない。
税額控除
・相続税の税額控除には、次のものがある。
《贈与税額控除》
・生前贈与加算の対象となった人(相続開始前3-7年以内に贈与を受けた人)が、贈与税を課された場合は贈与税額を相続税額から控除できる
《配偶者の税額軽減》
・配偶者が取得した財産が、次の金額のいずれか多い金額(1億6000万円 or 配偶者の法定相続分)までは相続税はかからない
・内縁は対象外

相続人が配偶者のみの場合は法定相続分が100%になるので、相続税の金額を問わずに全額が非課税となります。
《未成年者控除》
・相続や遺贈で財産を取得した相続人が未成年者である場合、下記の金額を控除できる
控除額=(18歳-相続開始時の年齢)×10万円
《障害者控除》
・相続や遺贈で財産を取得した相続人が障害者である場合、下記の金額を控除できる
控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
※特別障害者の場合は×10万円→×20万円
《相次相続控除》
・10年以内に相次いで相続があった場合、一定の税額を控除できる
《外国税額控除》
・外国にある被相続人の財産を取得し、その国で相続税に相当する税が課された場合、二重課税を排除するために税額を控除できる
《相続時精算課税制度による贈与税額控除》
・相続時精算課税制度で贈与税を支払った人が、贈与税が相続税額を上回った場合に、その超過分が還付される。
相続税の申告と納付
相続税の納税義務者
・相続税の納税義務者とは、相続や遺贈によって財産を取得した人のこと。
・納税義務者は、国内/国外居住者、日本国籍の有無などにより、課税される財産の範囲が異なる。


表でみるとややこしいですが、被相続人または贈与者が「国外に居住かつ10年以内に日本国内に住所なし」であり、かつ、相続人または受贈者が「国外に居住かつ日本国籍なしまたは10年以内に日本国内に住所なし」の場合以外は、すべての財産に課税されます。
相続税の厳しい日本ですが、そこから逃れるためには10年以上のタイムスパンでスケジューリングする必要があります。
相続税の申告
・相続税の課税価格が基礎控除以下の場合は申告不要。
・ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用した場合は、課税価格が0円でも申告が必要である。
・原則、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署長に申告する。

亡くなった人の準確定申告の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から「4か月以内」です。
相続税の納付
・税金は、納期限(申告書の提出期限)までに金銭一括納付が原則だが、相続税については延納や物納という方法も認められている。
《延納》
・延納とは、相続税の全部または一部を年払いで分割して納付する方法で、次の要件を満たした場合に認められる。
金銭一括納付が困難であること
納付すべき相続税額が10万円を超えていること
申告期限までに延納申請書を提出すること
担保を提供すること(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は担保不要)
《物納》
・物納とは、相続財産によって相続税を納付する方法で、次の要件を満たす場合に認められる。
延納によっても金銭納付が困難であること
申告期限までに物納申請書を提出すること
・物納する財産は、国内にある相続財産に限られる。また、次のように物納の順位がある。
⒈ 国債・地方債、不動産、船舶、上場株式等
⒉ 非上場株式等
⒊ 動産
・なお、原則として延納から物納への変更はできないが、申告期限から10年以内である場合で、延納による納付が困難になった場合には延納から物納に変更できる。
相続税の取得費加算
・相続により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を、譲渡資産の取得費に加算することができる。
・この特例を受けるための要件は次の通りである。
相続や遺贈により財産を取得した者であること
その財産を取得した人に相続税が課税されていること
相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までにその財産を譲渡していること
コメント
相続税の取得費加算は知っておいて良いかもしれません。土地や不動産を相続して相続税を支払ったけれど、使い道がない場合は3年以内に売却すれば節税になります。
遺産に係る基礎控除と、生命保険金・死亡退職金の非課税限度額は実技でも良く問われる印象です。
また、相続税の申告が10か月、準確定申告が4か月というのも良く出ます。
過去問

正解はこちら
正解は③です。未支給年金は受け取った人の一時所得となって所得税の対象(相続税ではない)です。

正解はこちら
正解は③です。実子がいる場合は養子は1人までカウントできるので、法定相続人はB・C・D・Eさんの4名です。従って、3000万円+600万円×4=5400万円となります。

正解はこちら
正解は②です。実子がいる場合は養子は1人までカウントできます。実子がいない場合は養子は2人までカウントできます。

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