DIC(主に敗血症性DIC)について

臨床

概要

今度、敗血症性DICについて発表する機会があったので、勉強φ(..)メモメモ

皆さんの施設では敗血症性DIC診療はどうなっているでしょうか??

DICの概要

基礎疾患の存在下に微小血管内血栓形成が多発かつ持続し,消費性凝固障害による出血傾向と微小循環不全による臓器障害をきたす重篤な病態である。敗血症に代表される凝固優位なDICでは臓器障害が著しく,白血病に代表される線溶優位なDICでは出血傾向が著しいなど基礎疾患によりDICの臨床像は異なっている。

日本救急医学会HPより

簡単にまとめると小さな血栓がたくさん出来て臓器障害を来たしたり、小さな血栓がたくさん出来て凝固因子が消費されることや線溶系が亢進することで出血傾向も呈する病気というイメージです。
どのDICも最初に血栓ができるという凝固の病態があり、それを溶かすための線溶の程度がDICの原疾患によって大きく異なり、臨床像が異なります。

上記引用にも記載されている通りで、凝固優位なDIC(線溶抑制型)、線溶優位なDIC(線溶亢進型)、その中間のDIC(線溶均衡型)と、基礎疾患によってもDICの臨床像は様々です。
今回主に取り上げるのは敗血症性DICで、敗血症性DICは一般に凝固優位とされています。線溶優位なDICとしては白血病の1つであるAPLが有名で、中間くらいのDICとしては固形癌が有名です。

DICは日本では積極的に治療の対象として扱おうとする風潮が強いですが、世界的にはあまり注目されていない病態であり、直近の敗血症性ガイドラインでもDICについての記載はなくなっています。DICを取り扱う世界的な学会として国際血栓止血学会(ISTH)がありますが、日本と世界でかなり温度差があることは知っておいてもよいかもしれません…

敗血症性DICの病態

 医學事始より引用

敗血症の場合では、病原体そのものや炎症性サイトカインの産生を介して好中球・単球・マクロファージ等から組織因子が産生されることで凝固カスケードが亢進することになります。結果としてトロンビンがたくさん産生されて、フィブリノーゲンがフィブリンになって凝固していきます(血小板による一次止血と、フィブリンによる二次止血)。

また、血管内皮細胞の傷害に伴って血管内皮細胞におけるトロンボモジュリン(TM)の発現が低下したり、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)の産生が亢進したりします。
TMは抗凝固活性を持ち、PAIは線溶を抑制する作用を持ちます。そのため、TMの発現低下により凝固が亢進し、PAIの増加によって線溶が抑制されることで更に凝固が活性化し、敗血症は凝固優位で線溶が抑制されたDICになります。

これらの過凝固を制御する因子として、アンチトロンビン(AT)やトロンボモジュリン(TM)などがあります。

DICの診断基準

様々な診断基準が提唱されており、どれが優れているということはありません。

日本版敗血症診療ガイドラインでは、早期DICの診断や治療開始判断には急性期DIC診断基準やsepsis-induced coagulopathy(SIC)診断基準、進行期DICの診断や死亡予測には国際血栓止血学会overt-DIC診断基準が挙げられています。

日本版敗血症診療ガイドライン2024より引用

救急領域では急性期DIC診断基準が用いられることが多い印象です。また、日本以外はDICへの興味が薄いですが、DICではなくsepsis-induced coagulopathy(SIC)として近年は取り扱われているようです。

DICの検査所見

DICの診断に関わる血小板やPT、フィブリノーゲン、FDP以外にも、AT、TATやPIC、PAIといったマーカーも注目されています。

【FDPとD-dimer】
FDPはフィブリノーゲンとフィブリンの分解産物、D-dimerはフィブリンの分解産物です。DICなどで形成された血栓を溶かすために線溶が亢進することで両者は基本的には一緒に上昇します。しかし、線溶系が非常に亢進している場合は、フィブリノーゲンがフィブリンになる前に線溶系により分解されてしまいます。このような線溶が亢進している場合には、フィブリンになる前にフィブリノーゲンが分解されるのでFDPは上昇するのですが、D-dimerはあまり上昇しないというFDPとD-dimerの解離が起こります。

【アンチトロンビン(AT)】
ATはトロンビンと結合することで抗凝固作用を示し、凝固を調整してくれる作用を持ちます。血液検査でも測定することができ、AT<70%などを指標に補充療法が行われることもあります(疾患によって推奨は違います)。

【TAT;thrombin antirhtombin complex】
TATは凝固亢進の程度を評価するために用います。凝固亢進の指標としてトロンビンが測定できれば良いのですが半減期が短く、トロンビンは測定できません。そこで、トロンビンとアンチトロンビンが結合した複合体であるTATを測定することで代用しています。凝固の指標なので、凝固が亢進すればTATは上昇します。DICでは線溶の程度に差はあれども、過凝固の病態は全例に存在するため、DICではTATが上昇します。

【PIC;plasmin α2 plasmin inhibitor complex】
PICはプラスミンとα2PIの複合体で線溶亢進の程度を評価するために用います。線溶系はプラスミノーゲンが血管内皮細胞から作られたtPA(tissue plasminogen activator:組織型プラスミノーゲン活性化因子)によりプラスミンになり、プラスミンがフィブリノーゲンとフィブリンを溶かす機序です。α2PIはプラスミンを阻害して線溶系を抑制する作用を持ちます。プラスミン自体が半減期が短く測定できないため、α2PIとプラスミンの複合体を測定することで線溶亢進の程度を評価します。

【PAI;plasminogen activator inhibitor】
PAIは血管内皮細胞から産生される線溶抑制因子です。tPAと結合することで線溶を抑制する作用を持ちます。PAIを測定することで線溶抑制の程度を評価することが出来ます。

敗血症は線溶抑制型DICとして知られており、過凝固の病態が存在するためTATは上昇、線溶系は抑制されているためPICは低値でPAIは上昇します。

日本血栓止血学会誌より引用

線溶亢進型の場合はFDP↑↑↑、D-dimer↑であり、FDPの方がD-dimerよりも大きく上昇します。

敗血症性DICの治療

アンチトロンビン(AT)

【敗血症診療ガイドライン2024】
敗血症性DICに対して,アンチトロンビンの投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)

【日本血栓止血学会播種性血管内凝固(DIC)診療ガイドライン2024】
敗⾎症に伴う DIC に対してアンチトロンビン製剤を投与することを強く推奨する(強い推 奨/中の確実性のエビデンス:GRADE 1B)

【Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021】
アンチトロンビンに関する記載はなし。

アンチトロンビンは主にトロンビンや活性化第Ⅹ因子を阻害して抗凝固作用を示すほか、血管内皮細胞のプロスタサイクリン産生調整を介した抗炎症作用を有することから、敗血症性DICへの効果が期待されています。

【敗血症診療ガイドライン2024】
5編のRCTの解析において、死亡は1,000人あたり147人減少(95%CI:214人減少~67人減少)であり、3編のRCTの解析において、DICからの離脱は1,000人あたり448人増加(95% CI: 161人増加~999人増加)であった。一方、望ましくない効果は、出血性合併症の増加である。3編のRCTの解析において、1,000人あたり8人増加(95% CI: 24人減少~89人増加)であった。

【日本血栓止血学会2024】
5RCT 391症例を解析対象とした。全原因死亡についてアンチトロンビン製剤投与 により中程度の効果が⾒込まれる(1000⼈当たり147⼈の減少)。出⾎性合併症は増加せず、DIC離脱については増加する可能性が⾼い。

日本におけ2つのガイドラインにおいて対象となった5本のRCTは同一のもので以下。

Double-blind, placebo-controlled trial of antithrombin III concentrates in septic shock with disseminated intravascular coagulation
Chest. 1993 Sep;104(3):882-8.

背景: 敗血症性ショックは、しばしば播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併する。多数の非対照臨床研究において、アンチトロンビンIII(ATIII)補充がDICおよび死亡を予防する可能性が報告されている。

方法: 本研究では、敗血症性ショックとDICを有する患者を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。患者はプラセボまたはATIII(負荷投与として90~120 IU/kg、その後4日間にわたり90~120 IU/kg/日)を投与された。新鮮凍結血漿、血小板、フィブリノゲン濃縮物の投与は、出血やプロトロンビン時間、血小板数、フィブリノゲン値の著しい低下を伴う患者に限定された。

結果: 計35名の患者が試験に参加(プラセボ群18名、ATIII群17名)。両群は人口統計学的、血行動態的、生物学的データのすべてにおいて均衡が取れていた。治療割り付けコードが開示される前に3名が除外された。ATIII群では、ATIIIレベルが迅速に補正され、10日目まで正常範囲を超えて維持されたが、プロテインCおよびプロテインSの循環レベルには影響を与えなかった。DICの持続期間は有意に短縮され、ATIII群では治療2日目に64%、治療終了時に71%の患者がDICから回復したのに対し、プラセボ群ではそれぞれ11%(p < 0.01)、33%(p < 0.05)であった。対象となった32名のICU内死亡率は、ATIII群で44%低下したが、統計学的有意差には達しなかった(p = 0.22, NS)。ケアの負担や輸血の必要量に差はなく、副作用も認められなかった。

結論: 本試験では死亡率が44%減少したが、その差は統計学的に有意ではなかった。ATIII補充は、プロテインCおよびプロテインSの循環レベルに影響を与えなかった。しかし、高用量のATIII濃縮物は、敗血症性ショックに伴うDICを有意に改善した。生存率向上の傾向が示されたことから、さらなる無作為化試験が求められる。

Antithrombin III supplementation in severe sepsis: beneficial effects on organ dysfunction
Shock. 1997 Nov;8(5):328-34.

凝固系およびトロンビンの活性化は、敗血症に関連する臓器障害の病態生理において重要な役割を果たす。
アンチトロンビンIII(AT III)は、トロンビンの天然阻害因子であり、トロンビンは多面的な活性を有する中心的な凝固促進因子である。実験的なAT III補充は、凝固パラメータを改善し、臓器機能障害を軽減することが示されている。本研究では、AT IIIの長期補充が臓器機能に有益な効果をもたらすかを検討するため、重症敗血症の外科患者を対象に無作為化前向き試験を実施した。

本試験では、AT III補充の長期的な効果を評価するため、治療期間を14日間と設定した。無作為化後(AT III群 vs. 対照群)、AT III群には14日間連続的にAT IIIを投与し、血漿AT III活性を120%以上に維持した。合計40名の患者(AT III群20名、対照群20名)が登録された。

11名の患者は病状の急速な悪化により、14日間の治療期間の基準を満たさなかった。これらの11名のうち、8名(AT III群5名、対照群3名)は敗血症性ショックにより72時間以内に死亡した。14日間生存したAT III群14名および対照群15名の間で、治療開始時の臓器機能の基準値には差がなかった。

AT III群では、DIC(播種性血管内凝固症候群)の患者全員でDICが消失したのに対し、対照群ではDICの頻度が一定のままであった(p < .05)。また、AT III群では、酸素化指数(PaO₂/FiO₂比)の漸進的な増加および肺高血圧指数(平均肺動脈圧/平均動脈圧(PAP/MAP)比)の持続的な低下が認められ、肺機能の改善を示した(p < .05 vs. 対照群)。さらに、AT IIIは、対照群で観察された血清総ビリルビン濃度の継続的な上昇を抑制し、人工腎代替療法の必要性を減少させた(p < .05)。

結論: 長期的なAT III補充は、肺機能の改善に寄与し、重症敗血症患者における敗血症性肝不全および腎不全の発症を防ぐ可能性がある。

Antithrombin III (ATIII) replacement therapy in patients with sepsis and/or postsurgical complications: a controlled double-blind, randomized, multicenter study
Intensive Care Med. 1998 Apr;24(4):336-42.

背景: 敗血症および/または敗血症性ショックではATIIIが低下し、その基礎値は死亡率と相関する。本研究では、集中治療室(ICU)に入院した特定の患者群を対象に、ATIII療法の死亡率に対する有効性を二重盲検無作為化多施設試験により評価した。

方法: ICUに入院し、ATIII濃度が70%未満の患者120名を無作為にATIII(総投与量24,000単位)またはプラセボ投与群に割り付け、5日間治療を行った。対象患者のうち56名は敗血症性ショックを伴っていた。

結果: ATIII治療群では、治療期間を通じてATIII濃度が安定して維持され(97~102%の範囲)、Kaplan-Meier解析では、ATIII群とプラセボ群の全生存率に有意差は認められなかった(それぞれ50%、46%)。しかし、敗血症性ショックおよび血行動態のサポートの必要性において、両群間で入院時のバランスが取れていなかったため、これらの2つの変数を調整したCox解析を実施した。その結果、ATIII治療は死亡リスクを低下させる傾向を示し、オッズ比(OR)は0.56であった。

さらに、解析した共変量のうち、敗血症性ショックおよびベースラインの多臓器不全スコアは生存率と負の相関を示し、一方で血漿ATIII活性レベルは生存率と正の相関を示した。ベースラインのATIII血漿濃度が1%増加するごとに、オッズ比は0.97となり、生存率の向上に関連していた。

結論: 本研究の結果は、ATIII補充療法が敗血症性ショック患者のサブグループにおいてのみ死亡率を低下させる可能性を示唆している。

Kienast試験(後にも出てきますが、Kybersept trialの事後解析です)

Treatment effects of high-dose antithrombin without concomitant heparin in patients with severe sepsis with or without disseminated intravascular coagulation
J Thromb Haemost. 2006 Jan;4(1):90-7.

背景: 播種性血管内凝固症候群(DIC)は、敗血症の重大な合併症であり、高い死亡率と関連している。

目的: 国際血栓止血学会(ISTH)の適応診断スコアリングアルゴリズムを用いて、DICの有無にかかわらず、重症敗血症患者に対する高用量アンチトロンビン(AT)療法の治療効果を評価した。

患者および方法: 重症敗血症を対象とした第III相臨床試験(KyberSept)から、併用ヘパリンを投与されず、DIC診断に必要なデータが揃っている563名の患者(プラセボ群277名、AT群286名)を対象とした。

結果: ベースライン時点で40.7%(563名中229名)の患者がDICを有していた。プラセボ群ではDICを有する患者の死亡リスクが有意に高く、28日死亡率は40.0%であり、DICを有しない患者の22.2%と比較して有意に高かった(P < 0.01)。AT治療を受けたDIC患者では、プラセボ群と比較して28日死亡率が14.6%低下した(P = 0.02)。一方、DICを有さない患者ではAT治療による28日死亡率の低下は認められなかった(死亡率0.1%減少、P = 1.0)。

AT治療群では、DICの有無にかかわらず出血合併症の発生率がプラセボ群よりも高かった(重大な出血率: DIC患者で7.0% vs. 5.2%, P = 0.6、非DIC患者で9.8% vs. 3.1%, P = 0.02)。

結論: 併用ヘパリンなしの高用量AT療法は、DICを有する敗血症患者の死亡率を有意に低下させる可能性がある。また、適応されたISTH DICスコアは、高用量AT療法の恩恵を受ける可能性のある重症敗血症患者を特定するのに有用である。

A randomized, controlled, multicenter trial of the effects of antithrombin on disseminated intravascular coagulation in patients with sepsis
Crit Care. 2013 Dec 16;17(6):R297.

この試験も後でまた出てきます。

序論: アンチトロンビン濃縮物の投与が播種性血管内凝固症候群(DIC)を改善し、DICからの回復および敗血症患者の予後を良好にするとの仮説を検証するため、13の三次医療機関における集中治療センターで前向き無作為化対照多施設試験を実施した。

方法: 本研究には、DICを有し、アンチトロンビンレベルが50~80%の敗血症患者60名を登録した。患者は無作為に、アンチトロンビンを1日30 IU/kgで3日間投与するアンチトロンビン群または介入を行わない対照群に割り付けられた。主要な効果判定項目は、3日目のDICからの回復であった。解析は意図した治療群に基づいて行われた。DICは、日本救急医学会(JAAM)のスコアリングシステムに従って診断された。全身性炎症反応症候群(SIRS)スコア、血小板数、凝固および線溶の全体的な指標は、0日目および3日目に測定された。

結果: アンチトロンビン治療群では、対照群と比較して3日目のDICスコアが有意に低下し、DICからの回復率が良好であった。軽度の出血合併症の発生率は増加せず、アンチトロンビン治療に関連する重大な出血は観察されなかった。血小板数は有意に増加したが、アンチトロンビンは3日目の序列臓器不全評価(SOFA)スコアや凝固および線溶のマーカーには影響を与えなかった。

結論: 中等量のアンチトロンビンは、DICスコアを改善し、出血のリスクなしでDICからの回復率を高める。敗血症患者のDICに対する治療として有効である。

日本の保険適用範囲内である1,500単位/dayと3,000単位/dayの比較では、高用量投与が出血性合併症を増やすことなくDIC離脱率および生存率を改善させる可能性が示されてたりします(以下の論文)。

Iba T, Saitoh D, Wada H, Asakura H. Efficacy and bleeding risk of antithrombin supplementation in septic disseminated intravascular coagulation: a secondary survey. Crit Care. 2014 Sep 15;18(5):497.

序論: 以前の報告では、アンチトロンビン(AT)活性が70%以下の敗血症関連播種性血管内凝固症候群(DIC)患者に対して、1,500 IU/日の投与よりも3,000 IU/日のアンチトロンビン濃縮物補充が有利な傾向を示したことを報告しました。しかし、生存率の差は統計的有意差には達しなかったため、より重症な患者群で効果を検討することを計画しました。

方法: 無作為化ではない多施設調査を実施しました。AT活性が40%未満の307名の敗血症性DIC患者を対象に、1,500 IU/日または3,000 IU/日のAT補充を3日間行った結果を分析しました。259名は1,500 IU/日(AT1500群)、48名は3,000 IU/日(AT3000群)の治療を受けました。主要な効果判定項目は、7日目のDICからの回復と28日目の全因死亡率でした。出血性有害事象も調査しました。ロジスティック回帰分析を用いて、年齢、性別、体重、初期AT活性、DICスコア、血小板数、ヘパリンの併用、リコンビナントトロンボモジュリン、感染源の疑い、手術、補充されたATの投与量を調べました。

結果: AT3000群では、AT1500群と比較してDICスコアが有意に低下し、DICの回復率が優れていました(66.7%対45.2%、P = 0.007)。さらに、AT3000群はAT1500群よりも良好な生存率を示しました(77.1%対56.4%、P = 0.010)。出血事象は、AT1500群で6.96%(重篤な出血3.04%)、AT3000群で6.52%(重篤な出血4.35%)でした(P = 1.000; 重篤な出血、P = 0.648)。ロジスティック回帰分析では、AT3000の使用(オッズ比(OR)2.419; P = 0.025)、初期血小板数の増加(OR 1.054; P = 0.027)、患者の年齢(OR 0.977; P = 0.045)が、生存率の改善と有意に関連していることが示されました。

結論: AT3000群は、AT1500群と比較して、生存率およびDICからの回復率が有意に改善し、出血のリスクは増加しませんでした。AT活性が40%未満の敗血症関連DIC患者において、AT3000群は有益であることが示されました。

リコンビナント・トロンボモジュリン(rTM)

【敗血症診療ガイドライン2024】
敗血症性DICに対して,リコンビナント・トロンボモジュリンの投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)

【日本血栓止血学会播種性血管内凝固(DIC)診療ガイドライン2024】
敗⾎症に伴う DIC に対してリコンビナントトロンボモジュリン製剤を投与することを強く 推奨する(強い推奨/中の確実性のエビデンス:GRADE 1B)

【Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021】
リコンビナントトロンボモジュリンに関する記載はなし。

リコンビナントトロンボモジュリンはトロンビンに結合しプロテインCを活性化することで抗凝固作
用を有するだけでなく、そのレクチン様ドメインを介した抗炎症作用も有することから、敗血症性DICへの効果が期待されています。

【敗血症診療ガイドライン2024】
4編のRCTを用いたメタ解析を行った。リコンビナント・トロンボモジュリン投与による望ましい効
果は、死亡の減少とDICからの離脱である。4編のRCTの解析において、死亡は1,000人あたり39人減少(75人減少~3人増加)であり、3編のRCTの解析において、DICからの離脱は1,000人あたり120人増加(4人増加~274人増加)であった。一方、望ましくない効果は出血性合併症であり、4編のRCTの解析において1,000人あたり12人増加(6人減少~41人増加)であった。

【日本血栓止血学会2024】
4RCT 1527症例を解析対象とした。全原因死亡についてrTM投与により⼩さな効果が⾒込まれる(1000⼈当たり39⼈の減少)。出⾎性合併症は悪化せず、DIC 離脱については増加する可能性が⾼い。

日本における2つのガイドラインにおいて対象となった4本のRCTは同一のもので以下。

Vincent JL, Francois B, Zabolotskikh I, Daga MK, Lascarrou JB, Kirov MY, Pettilä V, Wittebole X, Meziani F, Mercier E, Lobo SM, Barie PS, Crowther M, Esmon CT, Fareed J, Gando S, Gorelick KJ, Levi M, Mira JP, Opal SM, Parrillo J, Russell JA, Saito H, Tsuruta K, Sakai T, Fineberg D; SCARLET Trial Group. Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy: The SCARLET Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019 May 28;321(20):1993-2002. 

重要性: 以前の研究では、可溶型ヒト再組換えトロンボモジュリンが敗血症関連凝固障害の患者の死亡率を低下させる可能性があることが示唆されています。

目的: ヒト再組換えトロンボモジュリンとプラセボが敗血症関連凝固障害の患者における28日間の全死因死亡率に与える影響を明らかにすること。

デザイン、設定、参加者: SCARLET試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、国際的かつ多施設の第3相試験で、26か国159の施設の集中治療室で実施されました。対象は、2012年10月から2018年3月の間に参加施設の集中治療室に入院し、敗血症関連凝固障害と同時に心血管および/または呼吸不全がある成人患者で、国際標準化比(INR)が1.40を超え、かつ他の明らかな原因がなく、血小板数が30〜150 × 10⁹/Lの範囲、または24時間以内に血小板数が30%以上減少した患者でした。最終フォローアップ日は2019年2月28日でした。

介入: 敗血症関連凝固障害の患者は、トロンボモジュリン(0.06 mg/kg/d [最大6 mg/d])またはプラセボを1日1回、6日間、静脈内ボーラスまたは15分間の点滴で投与する群に無作為に割り当てられました(トロンボモジュリン群 n = 395、プラセボ群 n = 405)。

主要評価項目と測定方法: 主要評価項目は、28日間の全死因死亡率でした。

結果: 816名の無作為化患者のうち、800名(平均年齢60.7歳、437名(54.6%)男性)が研究を完了し、完全解析セットに含まれました。これらの患者では、トロンボモジュリン群とプラセボ群で28日間の全死因死亡率に統計的に有意な差は認められませんでした(トロンボモジュリン群395名中106名(26.8%)対プラセボ群405名中119名(29.4%)、P = 0.32)。絶対リスク差は2.55%(95% CI、-3.68%〜8.77%)でした。重大な出血有害事象の発生率( intracranial hemorrhage、生命を脅かす出血、または2日連続で少なくとも1440 mLの赤血球濃縮液(通常6単位)を投与した重篤な出血事象として分類されたもの)は、トロンボモジュリン群396名中23名(5.8%)、プラセボ群404名中16名(4.0%)でした。

結論および関連性: 敗血症関連凝固障害の患者において、ヒト再組換えトロンボモジュリンの投与は、プラセボと比較して28日間の全死因死亡率を有意に低下させることはありませんでした。

Hagiwara A, Tanaka N, Uemura T, Matsuda W, Kimura A. Can recombinant human thrombomodulin increase survival among patients with severe septic-induced disseminated intravascular coagulation: a single-centre, open-label, randomised controlled trial. BMJ Open. 2016 Dec 30;6(12):e012850.

目的
再組換えヒトトロンボモジュリン(rhTM)による治療が、重度の敗血症性播種性血管内凝固(DIC)患者の生存率を改善するかどうかを明らかにすること。

デザイン
単一施設、オープンラベル、無作為化対照試験。

設定
単一の三次病院。

参加者
重度の敗血症性播種性血管内凝固(DIC)患者92名。

介入
DICスコアが4以上の患者(日本急性期医学会の基準によるDIC診断基準)を対象とし、封筒法を用いて無作為化を行いました。治療群(rhTM群、n=47)は、入院24時間以内(0日目)に静脈内でrhTMを投与し、対照群(n=45)は深部静脈血栓症や肺塞栓症の患者を除き、抗凝固薬を使用しませんでした。

主要および二次測定項目
データは、0日目(入院日)、1日目、2日目、3日目、5日目、7日目、10日目に収集されました。主要評価項目は28日および90日の生存率でした。二次評価項目は、DICスコアの変化、血小板数、d-dimer、アンチトロンビンIII、C反応性蛋白(CRP)レベル、および序列的臓器不全評価(SOFA)スコアの変化を含みました。すべての分析は意図した治療解析(intention-to-treat)で実施されました。

主な結果
28日目の生存率は、対照群84%、rhTM群83%であり(p=0.745、log-rank test)、90日目の生存率は、対照群73%、rhTM群72%であり(p=0.94、log-rank test)ました。一方、DICからの回復率(DICスコアが4未満)は、rhTM群の方が対照群よりも有意に高かった(p=0.001、log-rank test)。d-dimerレベルの基準値からの相対的変化は、rhTM群の方が対照群よりも3日目および5日目において有意に低かった。

結論
rhTM治療はd-dimerレベルを低下させ、重度の敗血症性播種性血管内凝固(DIC)患者においてDICの回復を促進しました。しかし、この治療はこのコホートにおいて生存率の改善には至りませんでした。

Mori S, Ai T, Sera T, Ochiai K, Otomo Y. Human Soluble Recombinant Thrombomodulin, ART-123, Resolved Early Phase Coagulopathies, but Did Not Significantly Alter the 28 Day Outcome in the Treatment of DIC Associated with Infectious Systemic Inflammatory Response Syndromes. J Clin Med. 2019 Sep 27;8(10):1553.

背景
播種性血管内凝固(DIC)は、制御不可能な出血、多臓器不全、死亡を引き起こす壊滅的な全身的凝固障害です。敗血症はDICの一般的な原因の一つです。これらの凝固病態を修正するための多くの試みがなされてきましたが、敗血症に関連するDICの死亡率を改善する補助療法はまだ証明されていません。最近開発されたヒト再組換えトロンボモジュリンART-123がDICの治療に有効である可能性があるという臨床試験もありますが、無作為化プラセボ対照試験は少ないです。本研究では、全身性炎症反応症候群(SIRS)に関連するDIC患者60名にART-123(n = 29)または生理食塩水(プラセボ、n = 31)を使用して治療を行いました。両群の基礎的な臨床特性は類似していました。急性期における臨床重症度スコアおよびDICスコア、28日目の死亡率を比較しました。

結果
本研究では、ART-123群のDICスコアがプラセボ群よりも数日早く改善したことが示され、両群において重大な生命を脅かす副作用は観察されませんでした。28日目の全体的な生存率には有意な変化は見られませんでした。

結論
ART-123は感染性SIRSに関連するDIC患者において安全に使用できるが、そのDIC治療における真の有効性はさらに調査が必要です。

Vincent JL, Ramesh MK, Ernest D, LaRosa SP, Pachl J, Aikawa N, Hoste E, Levy H, Hirman J, Levi M, Daga M, Kutsogiannis DJ, Crowther M, Bernard GR, Devriendt J, Puigserver JV, Blanzaco DU, Esmon CT, Parrillo JE, Guzzi L, Henderson SJ, Pothirat C, Mehta P, Fareed J, Talwar D, Tsuruta K, Gorelick KJ, Osawa Y, Kaul I. A randomized, double-blind, placebo-controlled, Phase 2b study to evaluate the safety and efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin, ART-123, in patients with sepsis and suspected disseminated intravascular coagulation. Crit Care Med. 2013 Sep;41(9):2069-79.

目的
敗血症に関連した播種性血管内凝固(DIC)が疑われる患者における再組換えトロンボモジュリン(ART-123)の安全性と有効性を明らかにすること。

デザイン
第2b相、国際、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群、スクリーニング試験。

設定
17か国の233のICU。

患者
敗血症および修正国際血栓止血学会(ISTH)スコアを使用して評価された播種性血管内凝固が疑われるすべての成人患者。

介入
患者は、IV ART-123(0.06 mg/kg/日)を6日間投与される群、またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、標準治療が併用されました。主要評価項目は死亡率の低下でした。二次評価項目には、顕著な播種性血管内凝固の回復と疾患重症度の低下が含まれました。

測定と主な結果
750名の患者が無作為に割り付けられ、そのうち9名が割り当てられた治療を受けなかったため、371名がART-123群、370名がプラセボ群に分けられました。両群間で基礎となる変数に有意差はありませんでした。28日目の死亡率は、ART-123群が17.8%、プラセボ群が21.6%でした(Cochran-Mantel-Haenszel二側検定p値0.273、ART-123群に有利、これは有効性を示唆する事前定義された統計テストを満たしました)。生存してイベントのない日数に有意な差はありませんでした。d-dimer、プロトロンビン断片F1.2およびTATc濃度はART-123群でプラセボ群より低かったです。両群間で臓器機能、炎症マーカー、出血や血栓症のイベント、新たな感染症の発症に違いはありませんでした。事後分析では、ART-123の最大の利益は、少なくとも1つの臓器系の機能不全と国際標準化比(INR)が1.4を超えていた患者に見られました。

結論
ART-123は、敗血症および播種性血管内凝固が疑われる重症患者において安全な治療法です。この研究は、ART-123が敗血症関連の凝固障害(播種性血管内凝固を含む)において有効である可能性を示唆する証拠を提供しました。今後の研究では、この薬剤が最も効果が期待できる患者群に使用されることに焦点を当てるべきです。

ヘパリン

【敗血症診療ガイドライン2024】
FRQとして取り上げられているが、推奨の記載はなし。

【日本血栓止血学会播種性血管内凝固(DIC)診療ガイドライン2024】
敗⾎症に伴う DIC に対する未分画ヘパリン、低分⼦ヘパリンの有⽤性は明らかではない。

【Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021】
DVT予防としての低分子ヘパリン>未分画ヘパリンの推奨はあるが、DICに関する推奨はなし。

ヘパリンはアンチトロンビンと結合してトロンビンや活性化⾎液凝固第Ⅹ因⼦などを阻害し、抗凝固活性を発現する最も古くから臨床使⽤されている抗凝固薬です。

敗血症診療ガイドライン2020では敗血症性DICの標準治療として行わないことを弱く推奨するといった記載でしたが、COVID-19に伴う凝固障害にヘパリンが有効であったことや、近年は敗血症性DICやSepsis-induced coagulopathyにヘパリンが有効だったという報告も出てきている(以下)ことから、今後推奨度に変化が出てくるかもしれません。

Fu S, Yu S, Wang L, Ma X, Li X. Unfractionated heparin improves the clinical efficacy in adult sepsis patients: a systematic review and meta-analysis. BMC Anesthesiol. 2022 Jan 21;22(1):28.

背景
敗血症におけるヘパリンの抗凝固治療と臨床的有効性については依然として議論があります。本研究では、成人の敗血症患者における未分画ヘパリン(UFH)の臨床的有効性を推定するため、メタアナリシスを実施しました。

方法
Medline、Cochrane Library、PubMed、Embase、WEIPUデータベース、CNKIデータベース、WANFANGデータベースを2021年1月まで系統的にレビューしました。ランダム化比較試験(RCT)を含め、主要な結果として28日間の死亡率を評価しました。データ解析にはReview Manager(RevMan)バージョン5.3ソフトウェアを使用しました。このメタアナリシスには、15のRCTから2617名の患者が含まれました。

結果
対照群と比較して、UFHは28日間の死亡率を減少させることが示されました(RR: 0.82; 95% CI: 0.72〜0.94)。特に、Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II(APACHE II)スコアが15を超える患者では(RR: 0.83; 95% CI: 0.72〜0.96)効果が見られました。UFH群では、血小板数(PLT)(MD: 9.18; 95% CI: 0.68〜17.68)が増加し、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は短縮され(MD: -8.01; 95% CI: -13.84〜-2.18)、プロトロンビン時間(PT)の結果は統計的有意差を示しませんでした(P > 0.05)。また、UFHは多臓器不全症候群(MODS)の発症率を減少させ(RR: 0.61; 95% CI: 0.45〜0.84)、ICUでの滞在期間(MD: -4.94; 95% CI: -6.89〜-2.99)および人工呼吸の時間(MD: -3.01; 95% CI: -4.0〜-2.02)を短縮しました。UFHは出血に対して有害な影響を与えませんでした(RR: 1.10; 95% CI: 0.54〜2.23)。

結論
このメタアナリシスは、UFHが28日間の死亡率を減少させ、敗血症患者における臨床的有効性を改善し、出血の有害な影響を与えない可能性があることを示唆しています。

Li X, Liu Z, Luo M, Xi Y, Li C, Wang S, Yang R. Therapeutic effect of low-molecular-weight heparin on adult sepsis: a meta-analysis. Ann Palliat Med. 2021 Mar;10(3):3115-3127.

背景
低分子量ヘパリン(LMWH)は敗血症の標準的な支持療法の一部ですが、抗凝固療法に関する臨床研究は依然として議論を呼んでいます。本研究の目的は、成人の敗血症患者におけるLMWHの有効性と安全性をメタアナリシスにより探索することです。

方法
ランダム化比較試験に関する情報をPubMed、Embase、Web of Science、中国国家知識基盤(CNKI)、および中国WANFANGデータベースから各データベースの設立から2020年2月20日まで取得しました。成人の敗血症患者におけるLMWHの治療効果指標は、Stata15.0ソフトウェアを使用して分析しました。

結果
10の試験に684人の敗血症患者が含まれました。結果として、従来の治療法と比較して、LMWHはプロトロンビン時間を有意に減少させ(平均差(MD)=-0.48、95%信頼区間(CI):-0.83から-0.13)、急性生理学的慢性健康評価II(APACHE II)スコアを有意に減少させ(MD=-4.42、95% CI:-5.50から-3.33)、28日間の死亡率を有意に減少させました(相対リスク(RR)=0.52、95% CI:0.38-0.70)。また、血小板数が増加し(MD=34.99、95% CI:23.37-46.60)、腫瘍壊死因子α、インターロイキン-6、D-ダイマーのレベルが有意に減少し、多臓器不全症候群(MODS)の発症率も有意に減少しました。さらに、LMWHは出血イベントを増加させることはありませんでした(RR=1.29、95% CI:0.76-2.17)。

結論
通常の治療に基づいて、LMWHは凝固機能を改善し、炎症反応を減少させ、出血リスクを減少させ、多臓器不全症候群および28日間の死亡率の発症を減少させ、成人敗血症患者の予後を改善することが示されました。

Huang JJ, Zou ZY, Zhou ZP, Liu Y, Yang ZJ, Zhang JJ, Luan YY, Yao YM, Wu M. Effectiveness of early heparin therapy on outcomes in critically ill patients with sepsis-induced coagulopathy. Front Pharmacol. 2023 May 15;14:1173893.

この研究は、敗血症性凝固障害(SIC)患者において、早期に未分画ヘパリン(UFH)を投与することで生存率が向上するかを検討することを目的としました。

方法:
MIMIC-IVデータベースから、敗血症性凝固障害(SIC)と診断された入院患者を特定しました。患者は、ICU入室後24時間以内にUFHを皮下投与された群(UFH群)と、投与されなかった対照群の2つのグループに分けられました。主要評価項目はICU死亡率、副次評価項目は7日、14日、28日および院内死亡率でした。傾向スコアマッチング(PSM)、マージナル構造Coxモデル(MSCM)、E-value分析を用いて、ベースラインの違いや時間変動因子、測定されていない交絡因子を補正しました。

結果:
合計3,377人のSIC患者が対象となり、そのうちUFH群は815人、対照群は2,562人でした。傾向スコアマッチング後、UFHは主要および副次評価項目の死亡率を有意に低下させました。

ICU死亡率: HR 0.69(95% CI: 0.52–0.92)
7日死亡率: HR 0.70(95% CI: 0.49–0.99)
14日死亡率: HR 0.68(95% CI: 0.50–0.92)
28日死亡率: HR 0.72(95% CI: 0.54–0.96)
院内死亡率: HR 0.74(95% CI: 0.57–0.96)

また、マージナル構造Coxモデルにおいて、UFHは全患者のICU死亡率を低下させることが示されました(HR 0.64, 95% CI: 0.49–0.84)。さらに、SICスコア4の患者に限ると、生存率の向上が顕著であり(HR 0.56, 95% CI: 0.38–0.81)、UFHの投与量6,250–13,750 IU/日がICU死亡率の低下と関連していました。SICスコア4の患者のみを対象とした傾向スコアマッチングによるサブグループ解析でも、ICU死亡率は有意に低下しました(HR 0.51, 95% CI: 0.34–0.76)。

結論:
本研究は、敗血症性凝固障害患者に対する早期のUFH療法が予後の改善に関連することを示しました。特に、SICスコア4の患者において、UFH療法はICU死亡率の低下と強く関連していました。

普段よく使うヘパリンが未分画ヘパリンで、低分子ヘパリンは透析領域などで使うことが多い気がします。

DICの歴史を振り返る

アンチトロンビン(KyberSept Trial)

DICの歴史の始まりともいえるのが、重症敗血症に対するアンチトロンビンについて調べたKyberSept Trialです。

Warren BL, Eid A, Singer P, Pillay SS, Carl P, Novak I, Chalupa P, Atherstone A, Pénzes I, Kübler A, Knaub S, Keinecke HO, Heinrichs H, Schindel F, Juers M, Bone RC, Opal SM; KyberSept Trial Study Group. Caring for the critically ill patient. High-dose antithrombin III in severe sepsis: a randomized controlled trial. JAMA. 2001 Oct 17;286(15):1869-78.

この研究(KyberSept試験)は、重症敗血症および敗血症性ショック患者において、高用量アンチトロンビンIII(AT III)が生存率を向上させるかを評価することを目的としたものです。

方法:
1997年3月から2000年1月にかけて実施された二重盲検プラセボ対照多施設フェーズ3臨床試験です。2,314人の成人患者が無作為に2群(各1,157人)に割り付けられ、AT III(総投与量30,000 IU / 4日間)またはプラセボ(1%ヒトアルブミン)の静脈内投与を受けました。主要評価項目は、28日後の全死亡率でした。

結果:

28日死亡率: AT III群 38.9% vs プラセボ群 38.7%(P = 0.94)であり、有意差なし。
56日および90日死亡率: 両群で有意な差なし。
ICUでの生存期間: 両群で有意な差なし。
サブグループ解析:
ヘパリン併用なしの患者(n = 698): 28日死亡率は、AT III群 37.8% vs プラセボ群 43.6%(P = 0.08)であり、統計的に有意ではなかったものの減少傾向が見られた。
90日死亡率: AT III群 44.9% vs プラセボ群 52.5%(P = 0.03)で有意な差が見られた。
出血リスク:
ヘパリン併用患者: AT III群の出血発生率は23.8% vs プラセボ群13.5%(P<0.001)で有意に増加。

結論:
高用量AT III療法は、重症敗血症および敗血症性ショック患者の28日全死亡率を改善しなかった。ヘパリンと併用すると出血リスクが増加した。一方、ヘパリンを併用しなかったサブグループでは、90日死亡率の低下が示唆された。

今までに行われた最も大きなアンチトロンビンについてのRCTです。ただ、対象患者は特にDICの有無を問うておらず、アンチトロンビンの抗炎症作用に期待して行われたRCTでした。

結果としては28日死亡率に差はなく、海外ではAT製剤はリコメンドされていない状況です。

同試験を対象にした事後解析(Kienast試験(アンチトロンビンの章で同RCTは紹介済))の中で、ヘパリン非併用DIC患者においてはプラセボと比較してAT投与群で28日死亡率が改善しました。これが日本のガイドラインにおいて引用されているRCTの1つになります。ただし、本試験は事後解析であって当初から想定されていたサブグループ解析ではないことに注意が必要で、対象患者数も大元のKybersept trialから大きく減っており、この結果をそのまま臨床に持ち込むことにはリスクがありますが、日本では本試験の結果よりもこの事後解析が好まれているのが現状です。

このKienast試験も踏まえて日本で実施されたのが、アンチトロンビンのところで紹介したRCTの1つです(Gando S, Saitoh D, Ishikura H, Ueyama M, Otomo Y, Oda S, Kushimoto S, Tanjoh K, Mayumi T, Ikeda T, Iba T, Eguchi Y, Okamoto K, Ogura H, Koseki K, Sakamoto Y, Takayama Y, Shirai K, Takasu O, Inoue Y, Mashiko K, Tsubota T, Endo S; Japanese Association for Acute Medicine Disseminated Intravascular Coagulation (JAAM DIC) Study Group for the JAAM DIC Antithrombin Trial (JAAMDICAT). A randomized, controlled, multicenter trial of the effects of antithrombin on disseminated intravascular coagulation in patients with sepsis. Crit Care. 2013 Dec 16;17(6):R297.)。
この試験ではDIC離脱率(急性期DIC診断基準がDIC離脱基準としても用いられている)がprimary endpointでAT群でDIC離脱率はよかったです。ただ、secondary endpointであった28日死亡率には差がありませんでした。

プロテインC(PROWESS Trial)

敗血症に対するプロテインCの効果を調べた試験です。

プロテインCもアンチトロンビン同様、抗凝固作用や抗炎症作用を持っており、その敗血症への効果が期待されて行われた試験です。

Bernard GR, Vincent JL, Laterre PF, LaRosa SP, Dhainaut JF, Lopez-Rodriguez A, Steingrub JS, Garber GE, Helterbrand JD, Ely EW, Fisher CJ Jr; Recombinant human protein C Worldwide Evaluation in Severe Sepsis (PROWESS) study group. Efficacy and safety of recombinant human activated protein C for severe sepsis. N Engl J Med. 2001 Mar 8;344(10):699-709.

この研究は、重症敗血症患者におけるドロトレコギン アルファ(活性化プロテインC)の臨床効果を評価するフェーズ3試験です。

方法:
無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設試験

対象: 急性感染により全身性炎症と臓器不全を呈する患者

介入:
ドロトレコギン アルファ群: 24 μg/kg/時(96時間投与)
プラセボ群: 同様の投与スケジュール
主要評価項目: 28日後の全死亡率
副次評価項目: 副作用、バイタルサイン、検査値、微生物学的結果、活性化プロテインCに対する中和抗体の発生

結果:
患者数: 1,690人(プラセボ群840人、ドロトレコギン アルファ群850人)
28日死亡率:
プラセボ群: 30.8%
ドロトレコギン アルファ群: 24.7%
相対リスク減少: 19.4%(95% CI: 6.6–30.5%)
絶対リスク減少: 6.1%(P = 0.005) → 有意差あり
重篤な出血:
ドロトレコギン アルファ群: 3.5%
プラセボ群: 2.0%
P = 0.06(有意差なしだが、増加傾向)

結論:
ドロトレコギン アルファは、重症敗血症患者の死亡率を有意に低下させる可能性があるが、出血リスクの増加が示唆された。

この結果を踏まえて世界初の敗血症治療薬となったプロテインC製剤ですが、試験期間中に対象患者の変更等があり、賛否両論がある中での承認でした。APACHEⅡで評価する重症度が高いほど効果があったことから、重症患者など色々な縛りの中での承認となっています。

しかし、当時は敗血症への意識が世界的にも強くなく、思ったよりもプロテインC製剤が売れなかったことから、製薬会社が今は有名となったSurviving Sepsis Campaign(国際的な敗血症診療ガイドライン)を設立して敗血症の普及活動を行いました。

当初の発売で賛否両論多かったことから、プロテインC製剤についてはADDRESS試験、XPRESS試験、RESOLVE試験と色々な試験が行われ、最終的にPROWESS-SHCOK試験で28日死亡率に有意差がつかず、プロテインC製剤の敗血症治療薬としての道が絶たれることとなりました。

TFPI(OPTIMIST Trial)

TFPI(tissue factor pathway inhibitor)は抗凝固作用を持つ生理的な抗凝固因子(抗炎症作用は軽度)であり、これを敗血症の治療薬として検討した試験も複数行われました。

OPTIMIST試験やCAPTIVATE試験が行われましたが、28日死亡率の改善なく、その道は閉ざされています。

ヘパリン(HETRASE Study)

敗血症に対するヘパリンの効果を調べる試験も行われています。

Jaimes F, De La Rosa G, Morales C, Fortich F, Arango C, Aguirre D, Muñoz A. Unfractioned heparin for treatment of sepsis: A randomized clinical trial (The HETRASE Study). Crit Care Med. 2009 Apr;37(4):1185-96. 

この研究は、敗血症患者に対する低用量未分画ヘパリン(UFH)の効果を検討するランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。

目的:
主要評価項目:
入院期間(LOS: Length of Stay)
臓器不全スコア(MODスコア)の変化
副次評価項目:
28日全死亡率
感染部位、APACHE IIスコア、MODスコア、Dダイマー値によるサブグループ解析
方法:
デザイン: 単一施設(メデジン大学病院)でのランダム化二重盲検プラセボ対照試験
対象: 敗血症を疑われた救急患者319人
介入:
UFH群: 500単位/時を7日間持続投与
プラセボ群: 同様のプロトコールで偽薬投与

結果:
入院期間(LOS):
プラセボ群: 12.5日(IQR: 8–20日)
UFH群: 12.0日(IQR: 8–19.5日)
P = 0.976(有意差なし)
MODスコアの改善:
プラセボ群: 平均 0.13/日 減少
UFH群: 平均 0.11/日 減少
P = 0.240(有意差なし)
28日全死亡率:
プラセボ群: 16%
UFH群: 14%
P = 0.652(有意差なし)
サブグループ解析:
APACHE IIスコア、MODスコア、Dダイマー値による28日死亡率の有意な低下は認められず
有害事象:
重篤な有害事象は1例のみ(UFH群) → 完全回復

結論:
低用量UFHは敗血症において安全に使用できる可能性があるが、本研究では入院期間、MODスコア、28日死亡率の有意な改善効果は確認されなかった。

本試験はかなり軽症の患者を集めており、そういったことも関係しているのかもしれません。

リコンビナントトロンボモジュリン(SCARLET試験)

順番に説明していきますが、まずは国内第Ⅲ相試験(ART-123試験)からです。

Saito H, Maruyama I, Shimazaki S, Yamamoto Y, Aikawa N, Ohno R, Hirayama A, Matsuda T, Asakura H, Nakashima M, Aoki N. Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomized, double-blind clinical trial. J Thromb Haemost. 2007 Jan;5(1):31-41.

この研究は、播種性血管内凝固(DIC)を合併した血液悪性腫瘍または感染症患者に対し、組換えヒト可溶性トロンボモジュリン(ART-123)と低用量ヘパリンの有効性と安全性を比較した多施設共同ランダム化二重盲検試験です。

目的:
主要評価項目:
 DICの改善率(解消率)
副次評価項目:
 出血症状の臨床経過
 28日死亡率
 有害事象の発生率
方法:
デザイン: ランダム化二重盲検並行群間試験
対象: DIC患者 234人
介入:
 ART-123群: 0.06 mg/kgを30分間点滴(1日1回、6日間)
 ヘパリン群: 8 U/kg/時を24時間持続投与(6日間)
 二重ダミー法を使用

結果:
DIC解消率:
ART-123群: 66.1%
ヘパリン群: 49.9%
群間差: 16.2%(95%CI: 3.3–29.1, P < 0.05)
 → ART-123が有意にDIC改善
出血症状の臨床経過:
 ART-123群の方が有意に改善(P = 0.0271)
28日死亡率: 未記載(明確な差の報告なし)
出血関連有害事象(7日以内):
 ART-123群: 43.1%
 ヘパリン群: 56.5%
 P = 0.0487(有意にART-123群の方が低い)

結論:
ART-123はヘパリンと比較して、DIC改善率を有意に向上させ、出血症状を軽減することが示された。出血関連有害事象の発生率も低かった。

primary endpointが28日死亡率ではなくDIC離脱率であるのは違和感ですが、DIC離脱率はリコンビナントトロンボモジュリン群で改善しました。

一方で、secondary endpointで設定された28日死亡率には差がありませんでした。

続いて、世界進出を目指して行われたのが国際第Ⅱb相試験です。

Vincent JL, Ramesh MK, Ernest D, LaRosa SP, Pachl J, Aikawa N, Hoste E, Levy H, Hirman J, Levi M, Daga M, Kutsogiannis DJ, Crowther M, Bernard GR, Devriendt J, Puigserver JV, Blanzaco DU, Esmon CT, Parrillo JE, Guzzi L, Henderson SJ, Pothirat C, Mehta P, Fareed J, Talwar D, Tsuruta K, Gorelick KJ, Osawa Y, Kaul I. A randomized, double-blind, placebo-controlled, Phase 2b study to evaluate the safety and efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin, ART-123, in patients with sepsis and suspected disseminated intravascular coagulation. Crit Care Med. 2013 Sep;41(9):2069-79.

この研究は、敗血症関連播種性血管内凝固(DIC)の疑いがある患者における組換えトロンボモジュリン(ART-123)の安全性と有効性を検討した国際共同第2b相試験です。

目的:
主要評価項目: 28日死亡率の低下
副次評価項目:
 顕性DICの改善
 疾患重症度の低下
 血液凝固マーカーの変化
方法:
デザイン: 多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(スクリーニング試験)
対象:
 17か国233のICUに入院した敗血症関連DIC疑いの成人患者
 国際血栓止血学会(ISTH)修正スコアを使用
介入:
 ART-123群: 0.06 mg/kg/日を6日間静脈内投与(標準治療併用)
 プラセボ群: 標準治療+プラセボ
患者数:
 ランダム化 750人(ART-123群 371人、プラセボ群 370人)

結果:
28日死亡率:
 ART-123群: 17.8%
 プラセボ群: 21.6%
 P = 0.273(統計学的有意差なしだが、ART-123に有効性の示唆)
生存日数・イベントフリー日数: 両群で有意差なし
凝固マーカー: ART-123群で低下(D-ダイマー、F1.2、TATc)
臓器機能・炎症マーカー・出血/血栓イベント・新規感染: 両群で有意差なし
事後解析:
 ベースラインで1つ以上の臓器障害があり、INR > 1.4の患者ではART-123の有効性が最も高い傾向

結論:
ART-123は敗血症関連DIC患者に対して安全に使用可能であり、有効性を示唆する結果が得られた。
今後の研究では、ART-123が最も効果を示す患者層に焦点を当てるべきである。

この結果を踏まえて行われた第Ⅲ相試験が、SCARLET試験です。

Vincent JL, Francois B, Zabolotskikh I, Daga MK, Lascarrou JB, Kirov MY, Pettilä V, Wittebole X, Meziani F, Mercier E, Lobo SM, Barie PS, Crowther M, Esmon CT, Fareed J, Gando S, Gorelick KJ, Levi M, Mira JP, Opal SM, Parrillo J, Russell JA, Saito H, Tsuruta K, Sakai T, Fineberg D; SCARLET Trial Group. Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy: The SCARLET Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019 May 28;321(20):1993-2002. 

SCARLET試験: ヒト組換えトロンボモジュリン(rTM)の敗血症関連凝固障害(SAC)に対する有効性の検討

重要性:
これまでの研究では、rTMが敗血症関連凝固障害(SAC)の死亡率を低下させる可能性が示唆されていた。
本研究は、rTMが28日全死亡率に及ぼす影響を検討するための大規模な第3相試験である。

目的:
敗血症関連凝固障害患者において、rTMが28日全死亡率を低下させるかを評価する。

方法:
デザイン: 無作為化二重盲検プラセボ対照多国籍多施設共同第3相試験
実施期間: 2012年10月~2018年3月(最終追跡 2019年2月)
施設: 26か国159のICU
対象:
敗血症関連凝固障害(SAC)を有する成人患者
定義:
INR > 1.40(他の原因なし)
血小板数 30~150×10⁹/L または 24時間以内に30%以上減少
併存疾患: 心血管・呼吸不全を伴う
介入:
rTM群(n=395): 0.06 mg/kg/日(最大6 mg/日)を6日間静脈投与
プラセボ群(n=405)
主要評価項目:
28日全死亡率

結果:
対象者: 無作為化 816人 → 解析対象 800人(平均年齢 60.7歳、男性 54.6%)
28日死亡率:
rTM群: 26.8%(106/395人)
プラセボ群: 29.4%(119/405人)
P = 0.32(有意差なし)
絶対リスク差: 2.55%(95% CI, -3.68% ~ 8.77%)
重篤な出血事象:
rTM群: 5.8%(23/396人)
プラセボ群: 4.0%(16/404人)

結論:
rTM投与は敗血症関連凝固障害患者の28日全死亡率を有意に低下させなかった。
重篤な出血事象の発生率はrTM群でやや高かった。
今後の研究では、rTMの適応患者層を特定することが重要である。

結局どの試験でも28日死亡率に有意差はつきませんでした。また、日本における試験では28日死亡率ではなく、DIC離脱率がprimary endpointとされています。

最後に

皆さんの施設はどのようにDIC診療を行っているでしょうか?

当院では積極的にDICとして診断してATやrTMといった薬剤を加えるスタンスではなく、原疾患の治療を優先していることが多いです。ただ、CHDFやECMOといった臓器補助を要する患者において、血栓傾向の目立つ症例でヘパリンを効かせるためにAT投与を行うことはあります。

関連施設でrTMを頻回に投与しているところもありましたが、そういった施設にいた先生の話を聞いてもrTMが効いているのかどうかは実感しにくいようです。rTMなどを投与しなくても感染が良くなっていれば全身状態と合わせて凝固もそのうち立ち上がってくるため、あえて高額な薬剤をルーチンで投与しましょうというほどのコンセンサスには当院にはなっていません。

熱中症ならrTM使うべきだという先生がいたり、電撃性紫斑病では使うべきだという先生もいたりで、DIC診療におけるスタンスは人によっても違う印象です。

当院とは違って、施設によってはDICと診断したらATやrTMを積極的に入れていく施設も多くあり、どちらが正解かはよくわからないのが今の時点かと思います。

今後のデータの蓄積を待っていきたいですね。

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